ネコはどうして化けると言われるのか・・・
昔から、猫はものをいったり、死人を踊らせたり、人を食い殺してその姿、特に老女の姿に
化けるといわれています。
例えば、中国では隋(ずい)の時代(589〜619年)に、猫鬼(びょうき)という妖怪がいたことが、
ものの本に記されています。
また、古代エジプトでは、猫を神聖な動物と考えて信仰の対象にし、女神パシェトとして
崇拝しています。
このパシェトは猫の頭を持っていて、9回生まれ変わると信じられていました。
そこで、今でも猫は9回生まれ変わると信じている人がいるほどです。
また、古代エジプトでは黒猫が死ぬと、それをミイラとして保存していたらしく、何千という
黒猫のミイラが保存されている墓が発見されています。
時代が進んで15世紀の中世ヨーロッパでは、魔女と黒猫が結び付けられ、黒猫は魔女が
姿を変えたものと信じられ、魔女が怪しげな薬を作るときは、黒猫の脳を使うと思われ、
黒猫は3世紀にもわたる長い間不当な虐待を受けることになったのです。
ところで、わが国では、化け猫の話は鎌倉時代に出てきます。
藤原定家(ふじわらのていか)の『明月記』(めいげつき)には、貞永元年(1232年)8月に
京の都に大きさ犬くらいの猫股が現れて、一夜に7、8人もかみつき、死ぬ人も出たと
記されています。
また、兼好法師の『徒然草』にも、飼い猫が年をへて化けて猫股になり、人を食い殺すように
なるとか書かれています。
なかでも、一番有名なのが寛文10年(1670年)渋谷の下屋敷で起こったという、鍋島の
猫騒動の化け猫です。
このように、世界の至るところで、猫は魔性の動物で、縁起が悪いとか化けるものだと
思われています。
では、なぜこうした伝説、迷信が広く浸透したかと言うと、第一は猫の瞳の鋭敏な変化と
闇の中でキラリと光るその不気味な輝きでしょう。
エジプトでは、猫の目は太陽の回転に従って変化し、また暗闇の中で物を見ることができるのは、
太陽が猫の目を通して下界を見るからだと考えられ、そこで信仰の対象になったのです。
また、もう一つの理由として、暗いところで毛をなでると光るのも、昔のひとにとっては
不可解で気色悪いものであったのでしょ。
それになんといっても、猫の持つ陰性な性格が、化けると思われた大きな要因になっています。
例えば、犬は仲間といっしょに正攻法で獲物を倒しますが、猫は、たった1匹で爪を隠しこっそりと
忍び寄ったり、物陰に隠れて息をひそめ、やおらフーッと声をたてながら獲物に襲いかかります。
これではどうしても陰険と思われても仕方ありません。事実、猫は犬のような明るさと社交性に
欠けています。
例えば、たいていの動物は人間に飼い慣らされると、野生の時の行動パターンを大きく
変えさせられるものですが、猫は自分たちの行動は殆ど変えずに、ただ人間から逃げなくなっただけで
独立独歩で生活しています。
こうした猫の性質から、昔から猫は邪魔者扱いにされたり、化けると信じられたりしたのでしょう。
「つい誰かに話したくなる雑学の本」より